『社会が壊れるその前に』刊行まであと2ヶ月。 人は象徴の力から逃れられない

象徴の力が働く時、人は論理ではなく情動により動く。
磯野真穂 2026.08.02
誰でも

私はこれまで医療のことを語ってきました。でも9月に新潮選書から出る新刊は、医療がテーマではありません。

中心テーマは、人間の感情と象徴。そして社会。

コロナ禍以降特に考えるようになった感情の問題。

皆、表向きは論理的に語ろうとする。でも、何かを巡って激しい対立が起こっている時、そこでぶつかっているのは、論理ではなく、感情なのではないでしょうか。

感情がぶつかっているのに、お互いに論理的なフリをするから余計に対立が深まる。そんなことはないでしょうか。

感情はえてして個人の問題として語られます。怒りを感じたら6秒待ちましょう、とかね。

でも感情って、パーソナルなだけのものなのでしょうか。「集合的な感情」というのも存在するのではないでしょうか。

『社会が壊れるその前に メアリ・ダグラスの人類学』では、私たちの感情を個人の心に閉じ込められたものではなく、社会の中で共有されるものとして語ります。

社会の組織のされ方によって、立ち上がる象徴が変わり、それら象徴に人々が集合的に巻き込まれる様子を記します。

本のはじまりと終わりでは、本文を挟み込む形で次の一節を入れこんで、著者としての願いを記しました。

象徴の力が働く時、人は論理ではなく情動により動く。善き社会を作ろうとするあゆみが社会の息吹を消していく。そんなことは誰も望まないだろう。善き社会を作りたいのなら、自らがどのような象徴に巻き込まれているかを内省しよう。社会が壊れるその前にの。

「社会が壊れるその前に メアリ・ダグラスの人類学」

すでに本書は、ゲラ(本の試し刷り)が著者の手を離れ、カバーと帯ができあがり、刊行までのカウントダウンが始まっています。先日は、本書を広げてくれる営業担当の方と顔合わせがありました。こんな早くから動いてくださることに感謝しかありません。

AIが作り出す素早い知識に目を奪われがちなこの頃ですが、AIがなかった時代に生み出された、風化することのない古典の力をぜひ味わってください。

8月以降、新刊の告知が増えます。

「なんだ宣伝かよ」と思ってちょっと嫌な気分になる方は、登録解除をしてくださいね。渾身の力で、とはいえ丁寧に言葉を積み重ねて完成した一冊なので、著者としては宣伝をしたいのです。

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